家出のドリッピーから Duolingo まで。30年やって、それでもほぼ話せない私の話

「英語、30年。それでも、話せない。」窓辺の机に積まれた古い英語の参考書とノート、ヘッドホン、カセットテープ、コーヒーカップ 英語やり直し

英語教材を、たぶん30年買い続けてきた。
それでも、いまだにほとんど話せない。

これは成功談ではない。むしろ逆だ。同じように、何年も英語をやっているのに話せるようにならない——そういう人に向けて、正直なところを書いておきたい。

何を、どれだけやってきたか

最初の挫折は、たしかレコードだった。「家出のドリッピー」を買って、速さについていけずに脱落した。

そのあとも、思いつく限り手を出した。英語をリズムで覚える本。Penguin Readers と Oxford のやさしい多読本を50冊ほど。『一億人の英文法』『英語耳』『実践ロイヤル英文法』。NHKの「おとなの基礎英語」「しごとの基礎英語」。Speed Learning。Duo 3.0。ニンテンドーDSの「えいご漬け」。産業能率大学の通信教材。英検協会の教材。日本の漫画の英語版を10冊ほど。英語の吹き替えや字幕で観た映画やジブリ。書店で買ったものまで入れたら、もう数えきれない。

辞書も、おすすめと書いてあれば買った。

結果

2013年、マレーシア出張が決まって、3か月集中して勉強し、英検2級に合格した。
でも、現地ではほとんど会話にならなかった。結局、ジェスチャーだった。

そのあとのインドネシア、シンガポール、インド、タイ、韓国への出張も、だいたい身振り手振りと、現地の言葉の数字と、最低限の単語で乗り切ってきた。英検準1級は、一度受けて落ちた。

いま続けているのは、Duolingo だけ。
少しずつ身になっているものはあると思う。それでも——結果、ほぼ話せない。

振り返って、気づいたこと

これだけ並べてみて、ようやく分かったことがある。

私が買ってきたものは、ほぼ全部「インプット」だった。読む、聞く、覚える、文法を理解する。そればかりだった。そして、決定的に抜けていたものがある。「実際に、人と話す」練習だ。

証拠は、自分の中にあった。英検2級には、面接まで含めて受かった。なのに、現地では話せなかった。短くて型の決まった受け答えなら、必死さでなんとかなる。でも、相手と自由に言葉を交わす会話には、まるで歯が立たない。試験は通る。でも、話せない。つまり、教材が悪かったわけではない。たとえあの山のような教材を全部やり切っていても、たぶん結果は同じだった。「話す練習」をしていないものは、「話せる」ようにはならない。ただ、それだけのことだったのだと思う。

AIに頼っている、いまの自分

最近は Duolingo に、AI相手の会話練習がある。やってはいる。でも聞き取りは全文が頭に残らないし、言いたい単語がまるで出てこない。

そのあげく、会話練習のはずなのに、私はチャットに日本語を打ち込んで、英訳してもらったものを読んでいる。

これは、まったくの無駄だとは思っていない。言いたいことに対して、自分からは出てこなかった単語や言い回しが返ってくるので、「なるほど、こう言うのか」という発見は確かにある。ただ、毎回ちがう表現を一度ずつ読むだけなので、まるで定着しない。

最近、その理由がやっと腑に落ちた。
話せるようになることを筋トレに例えるなら、「これ、英語で何て言うんだ?」と自分の頭から絞り出す、あの瞬間が、一回のレップ(反復)だ。ところが日本語を打ち込んで英訳を読むとき、その”持ち上げる”作業を、AIが代わりにやってくれている。私は、AIが持ち上げたウェイトを、ただ眺めているだけだ。フォームの動画を何本見ても、それだけでは筋肉がつかないのと同じだと思う。

これから変えること

だから、一つだけ変えてみる。

まず、自分で英語にしてみる。下手でも、詰まっても、絞り出す。そのあとで、AIに答え合わせをしてもらう。順番を、逆にする。「先に自分で持ち上げてから、直してもらう」。

そして、毎回ちがう話題を追いかけるのをやめる。「自分が本当に言いたい数フレーズ」を選んで、何日かかけて、口から自然に出てくるまで繰り返す。新しさより、同じものの反復。

これでうまくいくかは、まだ分からない。30年やって話せない人間の言うことだから、説得力もないかもしれない。
それでも、何が抜けていたのかが、初めてはっきり見えた気がしている。

もし、あなたも同じなら——教材は山ほどあるのに、いまだに口から出てこないのなら——抜けているのは、たぶん、同じものかもしれない。

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